私とは何か

大学に入学して一ヶ月、生活も少し落ち着いてきて、安堵感があるような少し寂しいような気分の今日この頃。まだ一ヶ月だけど沢山の人に新たに出会ったなあ、としみじみとした気持ちになります。出身や経歴が全く違う。性格も違う。そんな誰かと知り合っていくことは、やっぱり不安があります。仲良くなれるのかな、私は相手にどう思われているのかな、と感じてしまいます。


そんな時、昔読んだ『私とは何か――「個人」から「分人」へ』(平野啓一郎,講談社,2012)という名著をよく思い出します。著者は「個人」に対する「分人」という新たな概念を提示します。「分人」とは、関わる相手や環境によって異なる人格が現れ、それは全部本当の自分だとする概念です。つまり、自分は分割できない一つの「個」でなく、自分という一つは様々に「分」割されたピースで構成されているということです。また、それぞれのピースが自分の中に占める割合は出会ってからの期間や頻度、出来事、性格など様々な要因に左右されます。また、新たな人に出会うと新たな「分人」が個人の中に生まれます。円グラフの項目が増えたり、項目の割合が変化するイメージです。


今の時期、新入生は皆自分の中の「分人」の数が増え、ピースの大きさも激しく変動しているはずです。自分のアイデンティティが揺らぐこともあるかもしれません。大変な時期ですが、新たな自分を発見できる時期でもあります。相対する人によって「分人」は違うし、その小さな「分人」の集合体が一つの「自分」を作っていく。無理に自分のアイデンティティを決める必要は無いし、目の前にいる人は自分を変えていく人です。「どんな私が生まれるのかな」と期待しながら、私は今日も新たな人に出会います。