個人主義VS人格的共同生活

ひとりじゃ出会えない、心がひらく瞬間
「自分のことは自分でしなさい」「大人として、人に頼らずに生きる力が必要だ」こういった考えも、生きていく上で、もちろん大切な側面だ。けれども、人間は本来、社会的であり、自己を閉ざして生きられる存在ではない。人が集まる場所には、一人では決して生まれない力、楽しさ、魅力がある。
大勢が集まれば、考え方も、興味も、得意なことも、言語も、習慣にもバリエーションが見られるのが普通だ。誰かの何気ないコメントが、他の人に新しい発想を与えたり、頭に新しい風が吹く。誰かの小さな努力が周囲の励みになり、また別の人の勇気が、まだ踏み出せない人の背中を押すこともある。こうして人と人が出会い集うとき、目には見えない相乗効果が生まれる。
多くの新入生と共に新年度を迎えた下鴨アカデミーは、恒例のオリエンテーションの夜、アイスブレイクのゲームに興じた。小さな頃の思い出の遊びや休日の過ごし方が「お題」になった時、その人らしさが表れるキーワードがいろいろと出た中に「縄文人ごっこ」というものがあった。一体どんな遊びなのか、かなり面白そうだと想像は膨らみ、私たちはお腹を抱えて笑うことになる。こんな楽しさや雰囲気は、1人きりでは生まれない、説明のできない価値だ。
誰かといるから、わたしが広がっていく
一人で勉強しているときには思いつかなかったポイントが、友人との会話の中で突然見えてくることもある。誰かの生き方に触れて、自分の将来の夢がはっきりすることもある。人の中にいることで、自分の可能性がさらに広がることもある。人が多い場所は、内面を豊かにする学び舎にもなる。違う価値観に出会うとき、私たちは自分の考えを深く見つめ直すものだ。うまくいかない関係に悩むこともあるかもしれない。しかしその経験を通して、忍耐や思いやり、理解力が少しずつ育っていく。こうした内的な実りは、一人ではなかなか得られないものだと思う。
いっしょに生きる勇気が、わたしを強くする
しばしば、「人に流されず、自分だけの道を行くこと」「わたしはわたし」とも言われる。それぞれの個性、内面やプライベートは大切であり、豊かにすべきであると同時に、他者とのつながりを恐れて個人主義に陥る危険も起こり得る。本当の強さは、人と共に生きながら、自分らしさを育てていく勇気にあるのではないか。
大勢の人の中に身を置くことは、ときに面倒で、気を使うことも多い。それでも、そこには友情が生まれ、互いを高め合う喜びがあり、一人では達せなかった人生の広がりがある。
大学時代、この下鴨アカデミーでの生活を通して、そうした出会いを思いきり経験できる特別な時間を過ごしてほしい。多くの人の中で学び、語り合い、励まし合う。その中で、自分自身をより深く知り、より大きく成長できる機会にしてほしいと願っている。



