いつか京都に住みたい!

修学旅行のバスの窓から眺めた京都の街並み。教科書の中にあった「歴史」が、圧倒的な質量を纏って目の前に現れた。あの瞬間から、私の心にはいつもこの町への憧れがあった。

実際に住んでみて気づいたのは、京都の魅力は世界遺産や寺社仏閣そのものよりも、その遺産が「当たり前の景色」として溶け込んでいる贅沢な日常。

それは日々の生活の中で「今日はどの道を通ろうかな」と迷える幸福な時間に繋がっている。どの道を選んでもいつも新鮮な気持ちで楽しめる。わくわくは尽きない。

観光客だった頃には見えていなかった、路地裏の風景も愛おしい。大通りから一本細い道に入れば、そこには地元の人の確かな息遣いがある。犬矢来や出格子のある町家。目を上げれば屋根の上には鍾馗さんがいる。それは単なるかざりではなく、この町の暮らしそのものだ。

町家を改装したカフェ、ガラガラと引き戸を引いて入る和菓子屋さん。抹茶を堪能できる茶屋の隣には、うっとり見惚れてしまうパン屋さん。鴨川の河原を自転車で走っていると、練習中のサックスの音が風に乗って聞こえてくる。夕暮れ時には比叡山が金色に輝く。そんな何気ない瞬間に、かつてこの町を彩った人々の影が重なる。

千年前の人々と、今の私。教科書の向こう側でしか会えなかった存在が、同じ場所に生きている。街角の石碑に刻まれた歴史を見つけるたび、彼らと「ご近所さん」になれるような気がしてくる。

あの日の私が夢見たのは、単なる観光地の景色ではなかった。歴史と現代が交差する「生活」そのものだった。初めて京都に足を踏み入れたあの日から月日が流れ、私は今、あの時「住みたい!」とまっすぐに思ったその時の感情のまま、この町で日常生活を送っている。

さあ今日は糺の森を通ろう。